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でも、私のものとは違うから。
敵が自分の味方を攻撃しているのがおかしくて」
以津真天が向けた視線の先に自身も視線を向ければ、そこには夜に見慣れた琴を弾く姿がある。
妖琴師の音を聴いた途端に悪鬼たちは頭をグラグラと揺らし、あまつさえ味方のはずの悪鬼に猛威を振るっている姿がある。
「あぁ、たまには違ったものを与えてみるのも良いと思ってな。
彼には魍妖を与えてみたんだ」
「そう」
「なかなか、あれはえげつないな」
苦笑交じりに言えば、以津真天はそれ以上何も言わなかった。
連日連夜桜の木の下へ通い続け、博雅からの酒盛りの誘いもそっちのけだったのは事実だ。
加えて、夜のほとんどは妖琴師の元へ訪れているようになり、日を重ねる毎に時間が伸びている気がする。
「おい、晴明!最近のお前の腑抜け具合はどうにかならないのか!」
「……そう言われてもな」
「仕事の最中でも気を抜いたようにぼんやりしやがって。
そんな様子じゃ、いつか鬼に食われるぞ」
「そのような失態をするわけがないだろう。
……だが、忠告感謝する」
不機嫌そうな博雅に言われた事には覚えがあった。
前までは都の為に尽力を尽くす事だけを天命にして動いていたというのに、今では夜を待つ事ばかりを気にしている節があった。
黒清明の事も忘れかけ、偶然見つけた大天狗の羽根で博雅が騒いでいようと、それが何なのか一瞬思い出せないくらいである。
原因と言えば、妖琴師と過ごす夜しか思い付かず、もう桜の木に行くのはやめようと心に決める。
だと言うのに、何故自分は今ここにいるのか。
気づいたらいつものように桜の木の下に来ており、目の前には琴を構える妖琴師の姿があった。
我に返ったのなら踵を返すべきだろう。
そう思い、足を動かせば不機嫌そうな声が引き止める。
「何処へ行くつもりだ」
前までは「早く去れ」と言っていた口が言う言葉には到底思えない。
「明日は早いのでな。
今日は早々に退散するつもりだ」
「ほう。
ここまで来ておいて今更そう言うのか」
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